その後の話

...and they lived happily ever after.

人生の隙間に落ちていた時の話

詳細を省くと単純に、色んなことが重なって、人生をできなくなった時期がある。

 

人生というのは例えば、ご飯を食べたり寝たり起きたり働いたり、あるいは働かないで娯楽に興じたり、あるいは育児をしたり家事をしたり、そういう生きていく過程でおおよそ人間が普通にやる色々なこと、それが全部できなくなった。呼吸はできていたけど、一番ひどいときは呼吸の仕方がわからなくなった気がしてパニックに陥ったりしていた(息をするのを忘れそうで怖くて眠れなかったのを覚えている)。スマホの通知も食器が当たる音も椅子を引く音も怖く、ただひたすら布団にくるまり、人生の隙間の底から、人生をやっている人たちを、ぼーっと見上げていた。

 

それからずっと、また普通に人生をやれるようになった今も、ふとあの時のことを思い出しながら生きてきたし、これからもそうだろうなと思う。人生の隙間と人生の間には越えられない膜のような崖のような何かがあるのに、そこに落っこちてしまう仕組みは謎で、確かに地続きであったことしか分からず、私が今人生をやっている側にいる偶然と、今たまたまそうでない人を包む膜を微かに認識しながら、遠くで人生を普通にやり続けてきた人たちの、ああでもないこうでもないという話をうまく聞き流すことが出来ず、あなたがいるところとあの人がいるところは繋がってるんですよ、というような気持ちだけを持て余し、何もできずにいる。それから、私が底にいた時に「待つための時間てあるんだよ」と言ってくれた人のことを思い出したりする。