その後の話

...and they lived happily ever after.

プールの話

子供の頃通っていたプールに、息子が体験レッスンを受けにきた。私がこの町に越してきたとき、ここのスポーツジムはまだなくて、新しいだけで何もない町に初めてできた都会的なスポージム、オープン当初の興奮を今でも覚えている。

 

最上階にあったプール、床から天井まで伸びた大きなはめ殺しの窓たち、そこから射し込む太陽の光、キラキラ眩しかった水面の照り返し。初めて体験したジャグジー。世界で一番おしゃれなプールにきてしまった、と思った。小学生の私。

 

25年経って、経営母体も変わり、建屋も傷や汚れが目立つようになり、あんなに広いと思っていた空間も大人の私にとっては少し手狭な感じのする、年季の入ったありふれたスポーツジム。利用者も老人が目立ち、その中で生命力を撒き散らしているこどもたち。代謝だ。町が代謝している。

 

帰りに地元の中華で坦々麺を食べた。私が密かに世界で一番美味しいと思っていた坦々麺だ(本場で四川坦々麺を食べた今でもまだ心のどこかでそう思っている自分がいる)。来るたびに肉味噌の量が少しずつ減っている気がして悲しい。

 

息子の記憶に残る、世界で一番美味しいラーメンはどこのお店のラーメンになるんだろう。南国のあの土曜日いつも行っていたお店の海鮮のやつかな。そう思って聞いてみたら「どこのラーメンもぜんぶおいしい」と言っていたので、このまま、今の君のまま大人になってほしいなぁと思った。